ウィジェットの証言

 Vtuberの方たちの配信を観ているとコラボ配信をされることがあります。規模や企画内容にもよりますが、そこでは、何人か集まってお話している様子が配信画面に映しだされることになります。これもよく調べた訳ではないですけれど、多くはOBSとDiscordの組み合わせを利用しているようです。その際に配信画面はひとによってさまざまなイメージ配置を行います、これは後述します。とにかく複数のVtuberがひとつの画面にいようとするとき、特有の画面イメージが成立したりする。
 先日私もお友達につきあってもらってVtuberの方たちと同じようなことをしてみました。下の参考画像でおおむねどんな感じだったかつかめたらよいのですが、まあ無音なのですが。左のキャラがお友達で右が私です*1。おしゃべりするとマイクからの音声入力に合わせて自分のアバター設定してる絵が動くのです。それを自分でもやってみたかった、通話中の相手のキャラがおしゃべりのたびに動くのを見てみたかった。

f:id:kyollapse:20220226174554g:plain:w400
Discord+OBS使用での通話の様子、2022年2月24日収録
f:id:kyollapse:20220322201138p:plain
Discordの画面共有機能(部分)。この機能とOBSを組み合わせることで、通話参加者同士がデスクトップから任意の画面領域を選び、画面を見せ合うことができる。画面左・私、画面右・通話相手

 なお事前に参照したものとして、

Vtuberのじゃじゃみさんによる解説動画:https://www.youtube.com/watch?v=IU1u4mK_Qn4
・DISCORD STREAMKIT:立ち絵変換:https://manten-do.net/contents/dsk01
CSSで使えるフィルター一覧(キャラを半透明にする、モノクロにする、ぼやけさせるなどの画像効果が得られる):https://developer.mozilla.org/ja/docs/Web/CSS/filter

 などがあります。基本的にこの方面への理解が私はほぼゼロなのですが、じゃじゃみさんの解説動画は要点をぜんぶ教えてくれるので基本的にそれに沿ってやったと思います。あとはほぼお友達の力に頼りました()。
 最初に引用した通話風景のGIF画像をもう一度見てみます。キャラが互いに斜めにぴょん!となってるのが判ると思います。一般的にコラボ配信で馴染み深いのは真上に軽くポップするY軸オンリーでの挙動です。あれってX軸方向には動けないのかな???と言ったら、お友達が「斜めに跳ねる」という挙動をつくってくれました。斜めに跳ね合うのもじわっとうれしい、とてもかわいいです。ただ、多人数での通話で全員この挙動にするとごちゃついた感じにはなるかも知れないですね。逆に、上のように少人数だと跳ねの挙動に人形劇っぽいニュアンスが生じてくるようにも思います。
 ところでここまで跳ねるという言い方を採ってきました。Discordでしゃべる。マイクが音声を検出し、対応したアバターがY軸に任意のパーセント分だけ移動する。声をおさめる。マイクが無音を判断し、対応したアバターが定位置に戻る。その一連の挙動を見て私がたはキャラが声に合わせて跳ねているようにも言い、認めもするのですが、あれは跳ねてるんでしょうか*2


 最初にふれておいたようにコラボ配信はさまざまのイメージ配置を取ります。そこに宿るのは、何人かで集まりおしゃべりしているのだ、ということをビジュアルそのもので示してみせたい気持ちです。3Dモデル同士で集まる、2Dの立ち絵を並べる、Live2Dと静止画が交じり合う、小さなアイコンと名前を箇条書きのように置く。そもそもモデル間の違いも大きく画面の見えに影響することがあります(尖ったモデル選択を厭わない個人勢のコラボでそれを多く感じてきた気がします)。人生つみこさんたちのバーチャル降霊百物語コラボなどは、モデルの絵柄(=イメージの文体)自体の違いの激しさごとパッケージしたような画面風景になっていました。しかしそれでいてこの3人の同居はふしぎと馴染むのです。また、複数のイメージが集っていることを「にじさんじワードウルフ【にじさんじ1期生全員参加】」は端的に配信者各自の配信画面ごと集まっているように表現してみせさえしました。正確には「矩形のウィンドウをバックに各配信者がバストアップで映っている」ということなのですけど、これが配信画面の雛形として見えることも、見えることを意識しているだろうことも伝わると思います。実際、そのような意味でのひとりひとりの配信画面を収めたコラボ画面は、遠くの星から連絡し合うステーションのようでした。画面上のモデル同士のサイズ感や位置調整も配信者たちには楽しい悩みの種になります。「でろもい やきとり!」ではモデルが誰の眼にも見えるかたちで操作可能な画像イメージだということと、そのことから帰結するなんともアドホックな対処の流れそのものに、配信者同士の気兼ねない親愛のようなものまで映っていたように思いだします。

f:id:kyollapse:20220220181008p:plain:w500
「【 後半23時30分~ 】 バーチャル降霊 百物語 2021【 真夏の Vtuber 怪談 企画 】」、人生 つみこJinsei Tsumiko、2021年*3
f:id:kyollapse:20220220182406p:plain:w500
にじさんじワードウルフ【にじさんじ1期生全員参加】」、にじさんじ、2018年*4
f:id:kyollapse:20220220183321p:plain:w500
「でろもい やきとり!」、《にじさんじ所属の女神》モイラ、2018年*5

 ときにコラボ配信では画面のレイヤー構成が情動を主導することもあります。勇気ちひろさんのお誕生日記念配信では、ゲストで来た宇志海いちごさんが絵を描いています。それを勇気さんはレイヤーを利用して、こっそり宇志海さんを覗き見するような画面に仕立て上げてしまうでしょう。これが宇志海さんのお絵描きを後ろから覗いているように受けとめるのには、リアリズムの視覚体制に倣うならどうしたって不可解さが残る筈です。レイヤーの前後・上下の厳格な区別は、後ろから手前にあるものの表面を覗き見るという曖昧な奥行きをゆるしてくれないようですから。けれど「表現」はその反対のことを支持してまわるように思える場所に、Vtuberの配信を通じて視聴者が積んできた経験もあるのではないでしょうか。今はもうエレ卒組と呼ばなくてはならなくなりましたが(うんうんち)、エイレーン学園の年末マイクラコラボは無理やり二画面(+二画面)同時配信で行われました。視聴者のことなどまったく配慮してない会話内容の素晴らしさとともに、画面の枠のなかにぎゅうぎゅう余白なしに押しこめたやっつけ感はそのままメンバーの距離の肩の近さを無言で伝えようとしているようで忘れられませんでした。こんなときコラボ配信は寄宿舎の相部屋です。

f:id:kyollapse:20220220183725p:plain:w500
ちひろのたんじょう日会🎂」、勇気ちひろ、2018年*6
f:id:kyollapse:20220220190602p:plain:w500
「【 年越し配信 】 2022年カウントダウン配信‼‼ IN マイクラ 【 むむいみ・あにも / 卯依れん / 紅花琥珀 / 夏目めい / エイレーン学園 】」、むむいみ・あにも - Animo Mumuimi -、2021年*7

 コラボ配信のなかで私がかなり気に入っているイメージ配置のひとつに、ほかの配信者の立ち絵を自分よりごく小さくサイズして画面に置くしかたがあります。たとえばエルセさんの画面のようなもの。

f:id:kyollapse:20220220181223p:plain:w500
「『ゲーム』オーバークック2でガチンコ対決!!🍳」、エルセとさめのぽき、2022年、*8

 机の上に小さくて愛しいフィギュアたちを置いて見守っている夜のような情動がでてしまうと思います。今おしゃべりしているお友達の──あなたの絵を自分の手のうちに集めて愉しんでるんだ、っていう。こっそりとして、いたずらっぽい、胸が苦しくなりそうな情動です。

*1:背景に映ってるサイトは私のブログです。どこ見てもピンクですまんな!!!

*2:このようにぴょこっと真上にイラストが跳ねる挙動。最小の2コマのキャッチ―なビート。これを私自身はどこか時代的な感性のもとに成ったもののように見ている。そう、時代的な。今これがひとをくすぐる、という省略的なモーション。配信者たちにも多くカバーされた「チューリングラブ feat.Sou」(ナナヲアカリ)のMVがその感性の非常に強まった例であったような。こうしたぴょこっのモーションはどこまでさかのぼれるだろうか。今流通している時代的な感性に接続できそうなものとして、私自身に照らして言えば「GJ部」や「未確認で進行形」のエンディングアニメでの動きが思い当たるのだが。もちろんもっと先まで行けるだろう。肝心なのは、切り詰めた動き、スイッチをパチパチするような感じである(この点、ナユタン星人の「エイリアンエイリアン (ft.初音ミク)」は一枚のイラストを鏡像反転ひとつで曲のビートと釣り合わせてみせる強度が印象的だが、画面外からタイミングよくキャラ絵が出現する「合いの手」という問題系とともに、ナナヲアカリのMVとどこかで通じていると思う)。奥深く練りこまれた挙動などではなく、イラストがサウンドに合わせてその場で跳ねるだけの、端的さへの喜びである。それがうれしいという気持ちのありかたである

*3:https://www.youtube.com/watch?v=0w_6AkmmV64

*4:https://www.youtube.com/watch?v=--rcP0N4Tc4

*5:https://www.youtube.com/watch?v=YKYLhoAJdtk

*6:https://www.youtube.com/watch?v=-qD7KLbuKEQ

*7:https://www.youtube.com/watch?v=cWMSM6yRPJw

*8:https://www.youtube.com/watch?v=d6UVn5W5ALc